【聴覚障害者の基礎知識】種類や等級・コミュニケーション手段を徹底解説!

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聴覚に障害を抱えると、日常生活や仕事の様々なところで支障をきたすことになります。一方で「聴覚障害」と一言でいっても、種類や原因・聞こえの程度・不便さは人それぞれです。両耳が全く聞こえない方もいれば、補聴器をつけると音がかすかに聞こえる方・音はある程度聞こえるけど言葉が聞き取れない方など、その状態は多岐に渡ります。「聴覚障害者の基礎知識」というテーマで、種類や等級・コミュニケーション手段に加え、日常生活や仕事における不便さについて解説します。少しでも不自由なく聴覚障害者が日常生活を送ることができるよう、理解を深めていきましょう。

  1. 聴覚障害者とは?
    1. 聴覚障害の原因
    2. 聴覚障害の種類
      1. 伝音性難聴
      2. 感音性難聴
      3. 混合性難聴
    3. 聴覚障害者の区分
      1. 中途失聴者
      2. 難聴者
      3. ろう(あ)者
    4. 聞こえの程度
    5. 聴覚障害者の程度等級
  2. 聴覚障害者のコミュニケーション手段
    1. 手話
    2. 筆談
    3. 読話
    4. 補聴器
  3. 聴覚障害者の困りごと(日常生活)
    1. コミュニケーションに関する悩み
    2. 生活上の悩み
    3. 情報収集の悩み
  4. 聴覚障害者の困りごと(仕事)
    1. 大勢の場では話の内容が理解できない
    2. 質問をすることができない
    3. 耳の不調を訴えやすい
  5. 聴覚障害に関する悩みは誰に相談するべき?
    1. 聴覚障害者センター
    2. 補聴器店のスタッフ
    3. X(Twitter)やFacebookを活用しよう
  6. 聴覚障害に関するマーク
    1. 耳マーク
    2. 聴覚障害者標識
    3. ヘルプマーク
    4. ほじょ犬マーク
  7. 聴覚障害者に関する福祉制度
    1. 税金の減免
    2. 公共料金の割引サービスや助成制度
    3. 障害者枠で就職活動ができる
  8. 障害者枠で就職するメリットとデメリット
    1. 配慮を受けることができる
    2. 体調不良の日に休みやすい
    3. 相談できる場所がある
    4. 一般枠に比べ給料が少ないことも
    5. 応募職種に偏りがある
  9. 聴覚障害者と受験上の配慮について
  10. 聴覚障害者への適切な配慮の仕方
    1. できるだけ雑音の少ない場所で話そう
    2. 名前を呼んでから会話を始めよう
    3. 聞き返されても笑顔で対応しよう
    4. ゆっくりと大きな声で話そう
    5. どんな配慮が必要か本人に聞いてみよう
  11. 手帳のない難聴者が利用できる福祉制度
    1. 障害年金
    2. 難病支援
    3. 補聴器の助成制度
  12. まとめ

聴覚障害者とは?

聴覚障害者とは、聞こえの不自由な人のことを指します。もっと分かりやすく言うと、耳が全く聞こえない人、もしくは聞こえづらい人のことです。現在、日本における聴覚障害者の人口は約36万人となっています。しかし「聴覚障害者」と一言でいっても、難聴になった原因や種類・時期は様々です。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

聴覚障害の原因

聴覚障害の原因は大きく「先天的」と「後天的」の2つに分類されます。難聴になった年齢によっては言葉の発達に影響を及ぼすことがあります。

先天的・・・遺伝・耳の奇形・妊娠中のウイルス感染など
後天的・・・突発性疾患・薬の副作用・騒音・高齢・頭部外傷など

聴覚障害の種類

聴覚障害の種類は主に3つあり、障害が引き起こされる部位によって異なってきます。種類に応じて、聞こえの程度や治療法が違います。

伝音性難聴

「伝音性難聴」とは、外耳や中耳に何らかの障害があることで引き起こされる難聴です。外耳炎や中耳炎・異物の詰まりなどが原因で、治療によって改善されるケースが多くあります。また難聴が残った場合には補聴器が有効です。

感音性難聴

「感音性難聴」とは、内耳や聴神経の障害が原因で引き起こされる難聴です。医学的に治療による聴力の回復は難しいと言われており、聴覚障害者に該当する方の多くは「感音性難聴」になります。突発性難聴やメニエール病・騒音性難聴・加齢性難聴・先天性難聴など原因は多岐に渡ります。聴力低下に伴い平衡感覚・方向感覚のずれが生じることも少なくありません。

混合性難聴

混合性難聴とは、伝音性難聴と感音性難聴の両方の症状が見られる難聴です。症状によって治療法が異なってきます。

聴覚障害者の区分

一般的には耳が不自由な人を総称して「聴覚障害者」と呼びますが、難聴になった時期や聞こえの程度によって「中途失聴者」「難聴者」「ろう(あ)者」の3つに区分されることがあります。それぞれの特徴について見ていきましょう。

中途失聴者

音声言語を獲得した後に聴力を失った人のことを指します。聞き取りはできないことが多いですが、一方で話すことは問題なくできる方が多いです。

難聴者

ある程度は聴力が残っているものの、健常者と比較すると聞き取り能力が低い人を指します。聴力レベルによって、さらに細かく「軽度難聴者」「中度難聴者」「高度難聴者」と分類されることもあります。難聴者の中には補聴器を利用して会話をする方も多いです。

ろう(あ)者

音声言語を習得する前に失聴した人を指します。日本手話を第一言語としている方が多いです。

聞こえの程度

聞こえの程度は主にdB(デシベル)という単位を使って分類されます。※dBとは音の強さを表す単位です。

正常     0dB〜25dB(時計の秒針・ささやき声)
軽度難聴   25dB〜40dB(小さな声)
中程度難聴  40dB〜70dB(通常の会話・チャイム)
高度難聴   70dB〜90dB(大きな声・掃除機)
重度難聴   90dB〜130dB(クラクション・サイレン・電車の音)

聴覚障害者の程度等級

厚生労働省が定めた基準を満たすと、身体障害者手帳の交付を受けることができます。一般的には、この基準を満たした人を「聴覚障害者」と呼びます。身体障害者手帳を取得することで様々な公的制度を利用することが可能です。程度等級は下記の通りになります。

程度等級 交付基準
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上のもの(両耳全ろう)
3級 両耳の聴力レベルが90dB以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
4級 1. 両耳の聴力レベルが80dB以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)

2. 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下のもの

6級 1. 両耳の聴力レベルが70dB以上のもの(40cm以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)

2. 一側耳の聴力レベルが90dB以上、他側耳の聴力レベルが50dB以上のもの

日本では基本的に70dB以上から身体障害者手帳を取得することが可能です。これは先進国の中では非常に基準値が高く、WHO(世界保健機関)が定めている基準に比べると、大変厳しいものとなっています。

聴覚障害者のコミュニケーション手段

聴覚障害者が用いるコミュニケーション手段には、手話や筆談・読話・補聴器などがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

手話

手話は日本語とは違うコミュニケーション手段です。手指の動作や顔の動きによって表現されます。一方で、聴覚障害者になったからといって、すぐに手話が使えるようになる訳ではありません。訓練しないと身に着けることができないのが特徴です。

筆談

筆談は、文字を書くことでコミュニケーションを図る方法です。手話を十分に使いこなせない聴覚障害者にとっては非常に有効なコミュニケーション手段になります。

読話

相手の口の動きを読み取り内容を理解する方法を「読話」と言います。日本語の場合は同口形異音も多数あるため、読話のみで会話全てを理解するのは極めて難しいです。そのため、手話や身振り手振りなどを合わせて行うのが一般的になります。

補聴器

聴力が残っている場合は、補聴器を装着することで相手の言葉を聞き取ります。しかし補聴器はあくまでも音を大きくする機械のため、つけることで会話が聞き取れるようになるかは人によって個人差が強いです。周囲の協力が必要不可欠になります。

聴覚障害者の困りごと(日常生活)

聴覚に障害を抱えると、日常生活で困ることも少なくありません。また、見た目では分かりづらいことから、周囲の協力を得ることが難しいのも事実です。では聴覚障害者の多くは、具体的にどのような悩みを持っているのでしょうか。詳しく解説します。

コミュニケーションに関する悩み

・無視をしたと誤解される
・会話の内容を十分に理解できない
・周りの雰囲気に合わせて愛想笑いをする
・店員さんの説明や質問が分からない
・電話が聞き取れない
・3人以上のグループになると会話についていけない
・聞き返す回数が多くなってしまう

生活上の悩み

・病院で呼び出されても気づくことができない
・目覚まし時計が聞こえない
・場内放送が聞き取れない
・筆談を断られてしまう
・自動車が近づいてくる音が聞こえづらい
・電子レンジや玄関のチャイムの音が聞こえない
・電話でタクシーを呼ぶことができない
・電話による本人確認が難しい
・ドライブスルーで注文ができない

情報収集の悩み

・授業の内容が理解できない
・字幕が付いていないテレビ番組が見れない
・災害やトラブル時の放送が聞こえない
・健常者との情報量の格差が激しい
特に近年では新型コロナウイルスの影響に伴い、マスクを付けて会話をする方が増えたことから、コミュニケーションにおいて悩みを抱える聴覚障害者が増えてきています。聴覚障害者全員が上記の悩み全てに該当する訳ではありませんが、日常生活に不便さを感じている聴覚障害者が多いのは事実と言えるでしょう。

聴覚障害者の困りごと(仕事)

聴覚障害者の離職率は他の障害に比べ高いと言われています。ではその原因は何なのでしょうか。ここでは仕事面における聴覚障害者の困りごとについて解説します。

大勢の場では話の内容が理解できない

聴覚障害者の多くは手話や読話を用いてコミュニケーションを図るケースが多いです。しかし、職場で周りに手話ができる方はほとんどいないということが多く、また読話においては、会話の相手が複数人となると上手くいかないことが多くあります。そのため、朝礼や会議といった複数人が同時に話すことが多い大勢の場では、話の内容を理解できない聴覚障害者が少なくありません。思うように情報収集ができず、仕事でトラブルを引き起こしてしまうことも多くあります。聴覚障害者が仕事を長続きできない理由の一つと言えるでしょう。

質問をすることができない

会話を聞き取ることに苦労が多い聴覚障害者にとって、相手に質問をするということは非常にハードルの高い行動です。何度も聞き返すことで相手に負担をかけてしまうのではないかと考え、質問をすることに躊躇してしまうのです。特に日々忙しくしている職場では、居心地が悪いと感じてしまう聴覚障害者も多いことでしょう。質問をしたくても思うようにできない辛さは、聴覚障害者の悩みとして大きなものがあります。

耳の不調を訴えやすい

聴覚に障害を抱えると、めまいや吐き気といった耳の不調を引き起こすことが多くあります。そのため、急に仕事を休まなければならない状態に陥る聴覚障害者も少なくありません。自身の体調が不安なうえに、職場に迷惑をかけているのではないかと思い、罪悪感を抱く方も多いでしょう。ご紹介した内容は一例にしかすぎませんが、仕事面で悩みを抱えている聴覚障害者は数多くいます。特に、情報が目まぐるしいスピードで飛び交う現代において、コミュニケーションや情報収集の面で苦労しているケースが多く見受けられます。聴覚障害者が不自由なく仕事を続けるためには、周りの協力がなければ難しいと言えるでしょう。

聴覚障害に関する悩みは誰に相談するべき?

聴覚障害は見た目では分かりづらい障害の一つです。そのため、悩んでいることに周囲が気づいてあげることができず、一人で思い悩んでしまうケースも少なくありません。同時に会話をすることに抵抗感を持ちやすくなるため、自ら相談することを拒む聴覚障害者も多くいます。ここからは聴覚障害者が悩みを抱えた際のオススメの相談相手をご紹介します。

聴覚障害者センター

ほとんどの県には、聴覚障害者センターが存在します。各センターにより行っているサービスは多少異なりますが、「聴力検査」「字幕の入った映像物の無料貸出」「手話教室」や「聞こえの悩み相談」などが実施されていることが多いです。「聞こえの悩み相談」では、聴覚分野に詳しいアドバイザーが日常生活や仕事の悩み・進路について丁寧に相談にのってくれます。基本的に無料で利用することができるため、相談相手としては最適と言えるでしょう。有益な情報をもらえるかもしれません。

補聴器店のスタッフ

障害の程度や種類にもよりますが、聴覚障害に困っているのであれば「補聴器店のスタッフ」に相談するのも良い方法です。近年では補聴器の性能もかなり高く、数年前に試して効果がなかった方でも、今では効果があるというケースも多く見受けられます。もちろん補聴器の効果には個人差があり、期待できないことも多々ありますが、自身の聞こえを再認識する意味でも「補聴器店のスタッフ」に相談するのも良いでしょう。

X(Twitter)やFacebookを活用しよう

最近では、聴覚障害や難聴に特化したコミュニティが増え、TwitterやFacebookを使って悩み相談をすることができるようになりました。実際に対面で会わなくても、Zoomなどのアプリを利用して相談できるのが特徴です。同じ境遇の人同士で繋がることができるため、自身の悩みを解決する良いヒントになるでしょう。ぜひ、TwitterやFacebookを活用して、同じ境遇で生きる仲間と繋がってみてはいかがでしょうか。

聴覚障害に関するマーク

聴覚障害は見た目では分かりづらいため、周囲から誤解を受けることも少なくありません。そのため、理解と周知を目的に様々なマークが存在します。ここでは聴覚障害に関わるマークについて4つご紹介します。

耳マーク

「耳マーク」とは、聞こえが不自由なことを表すマークです。同時に聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマークでもあります。印刷物や表示板など使用用途は多岐に渡ります。

聴覚障害者標識

「聴覚障害者標識」とは、聴覚障害者であることを理由に免許に条件を付されている方が運転する車に表示するマークです。道路交通法により義務付けられています。やむを得ない場合を除き、マークをつけた車に幅寄せ・割り込みを行った運転者は、道路交通法の規定で罰せられることになっております。

ヘルプマーク

「ヘルプマーク」とは、義足や人工関節を使用している方・内部障害や難病の方・また妊娠初期の方など、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることができるマークです。ヘルプマークを身に着けた方が近くにいる場合は、より一層思いやりのある行動を取ることが大切です。

ほじょ犬マーク

「ほじょ犬マーク」とは、身体障害者補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)同伴の啓発のためのマークです。「身体障害者補助犬法」により、公共施設や交通機関に加え、民間施設でも身体障害者補助犬が同伴できるようになりました。このマークがある施設やお店のみ同伴可能という訳ではないため、注意が必要です。このように聴覚障害に関するマークは数多くあります。しかしマークはあくまでも周囲に障害持ちであることを知らせ、理解を促すためのものです。そのため、一人ひとりが思いやりのある行動を取ることが何よりも大切になってきます。また最近では、聴覚障害を周囲に知らせるグッズとして「バッチ」や「ステッカー」なども多く販売されています。イラストやデザインにこだわっているグッズが数多くあるため、ご興味がある方はネット等で検索してみるのも良いでしょう。

聴覚障害者に関する福祉制度

国が定めている基準に該当していれば「身体障害者手帳」の交付を受けることができ、様々な公的制度を利用することが可能です。ここからは、身体障害者手帳を取得することで利用できる制度についてご紹介します。

税金の減免

納税者または配偶者・扶養親族が身体障害者手帳を交付されている場合、一定の金額の所得控除を受けることができ、所得税・住民税が軽減されます。同時に自動車取得税・自動車税・軽自動車税の減免を受けることも可能です。減免内容は自治体によって多少異なります。

公共料金の割引サービスや助成制度

様々な公共料金の割引サービスや助成制度等が用意されています。下記に主な制度をまとめております。
・JRやバス・航空運賃などの公共機関の割引
・NHKの放送受信料の割引
・有料道路通行料金の割引
・携帯電話基本料金の割引
・医療費・補装具・リフォーム費用の助成
・公共施設等の入館料等の割引

障害者枠で就職活動ができる

身体障害者手帳を取得することで、障害者雇用促進法に基づく障害のある方への特別な雇用枠「障害者雇用枠」へ応募し、就職(転職)することが可能です。一般枠で応募するよりも企業側からの理解が得やすく、また様々な配慮を受けることができます。障害者枠で就職するメリットとデメリットについては次の章で詳しく解説しておりますので、ご覧ください。

障害者枠で就職するメリットとデメリット

身体障害者手帳を取得することで、障害者枠で就職をすることが可能になります。実際に、聴覚障害者の中でも障害者枠で企業に勤めている方は少なくありません。では、一般枠で就職を行うのとどのような違いがあるのでしょうか。ここではメリットとデメリットについてご紹介します。

配慮を受けることができる

障害者枠で勤めている場合、企業側からの理解が得られやすいです。例えば聴覚障害者の場合では、電話対応のない部署に配属してくれたり、接客の機会が少ない職種を選んだりすることが可能です。自身の障害を大きく気にすることなく働けるため、長期間に渡って同じ企業に勤めることができます。

体調不良の日に休みやすい

障害者雇用では、体調不良の際の通院、体調を崩さないよう時短勤務をすることなどが雇用条件の中にあらかじめ入っているケースが多いです。そのため、体調不良の日には無理に職場に行かなくても良い場合があります。耳の不調を訴えやすい聴覚障害者においては、非常に安心と言えるでしょう。

相談できる場所がある

企業によって障害者雇用の担当部署があったり、個別に担当者が付いているなど、相談できる体制が整っているところも多くあります。障害をオープンにしているため、何か困ったことがあれば気軽に相談することができるでしょう。もし一般枠で就職した場合には、障害を隠して就職していることになるため、相談は必然的にしにくくなるでしょう。

一般枠に比べ給料が少ないことも

企業によって異なるため一概には言えませんが、障害者枠の求人は一般枠に比べ給料が低いことが多いです。また昇給もしにくい傾向があるため、お金をガッツリ稼ぎたいという方にはデメリットと感じるでしょう。

応募職種に偏りがある

障害者枠で応募できる職種には偏りがあります。実際に求人を見てみると、事務職や軽作業といったルーチンワークの多い職種が多数見受けられます。変化の少ない仕事が良いと感じる場合であれば大きな問題はありませんが、様々な職種を経験していきたいという方にとっては、メリットを感じることができないかもしれません。

聴覚障害者と受験上の配慮について

障害者手帳の有無に関わらず、受験やTOEICなどの検定では特別な手続きを行うことで、配慮を受けることが可能です。ただし、配慮の内容については障害者手帳を所持しているかどうかで異なります。ここでは、英検における聴覚に関する配慮についてご紹介します。
障がいのある方への受験上の配慮について(PDF)より引用
(https://www.eiken.or.jp/eiken/apply/pdf/tokubetusochi.pdf)

【一次試験】

一次試験
対象区分 配慮内容 試験教室 試験時間
障害等級が6級程度より重度の聴覚障害者 【テロップ】

リスニングテストを音声ではなく文字で映し代替とします。

別室 リスニング放送(CD)の1.5〜2倍
【強音放送】

リスニングテストを別室にてボリュームを上げて聞きます。

通常
上記以外の難聴者 【座席配置】

スピーカー近くに座席を配席して受験します。

一般同室

 

【二次試験】

二次試験
対象区分 配慮内容 試験時間
障害等級が6級程度より重度の聴覚障害者 【筆談】(音読を口話で実施)

面接委員からの指示や質問はフラッシュカード(FC)で示されます。受験者は、FCを見て質問に対する応答を英文で書いて答えます。2〜3級のパッセージ音読は口頭で行います。

筆談記入・フラッシュカード提示のため通常より長くなる
【筆談】(音読を筆談で実施)

面接委員からの指示や質問はフラッシュカード(FC)で示されます。受験者は、FCを見て質問に対する応答を英文で書いて答えます。2〜3級のパッセージ音読は口頭で行います。1級・準1級はパッセージ音読がないためこちらを選択してください。

【FC+口話】

面接委員からの指示や質問はフラッシュカード(FC)で示されます。受験者は、FCを見て質問に対する応答を英文で書いて答えます。

フラッシュカード提示のため通常より長くなる
上記以外の難聴者 【口話】

通常通りの面接を行いますが、面接委員からの質問や指示は、聞こえの状態に合わせて、ゆっくりはっきり大き目の声で行います。

通常

配慮を希望する際は、医者の診断書などが必要になることが多いです。試験や検定によって異なりますが、健康診断書では受付NGなところも多いため、配慮を受ける際は、前もって準備するようにしましょう。

聴覚障害者への適切な配慮の仕方

言葉が十分に聞き取れないことから、聴覚障害者の多くはコミュニケーションを図ることを苦手としています。不自由なくコミュニケーションを取るには周囲の協力が必要不可欠です。そこでここからは、聴覚障害者への配慮の仕方をご紹介していきます。周囲に聴覚障害者がいる方は実践してみてください。

できるだけ雑音の少ない場所で話そう

音の聞き分けが苦手な聴覚障害者にとって、雑音下での会話は非常に難しいです。静かな環境では聞き取れる言葉でも、周りが騒がしければ聞き取れないケースが多くあります。そのため、できるだけ雑音の少ない場所で話すように心掛けましょう。外食を行う場合には、個室のある部屋を用意してあげると親切です。

名前を呼んでから会話を始めよう

聴力が落ちると次第に音の方向性や距離感を掴むことが難しくなります。そのため、急に名前を呼ばれると気づけないケースが多いです。聴覚障害者と話をする際には、一言名前を呼んでから話をし始めると良いでしょう。会話へのハードルを下げることができます。

聞き返されても笑顔で対応しよう

聴覚障害者の悩みとして多く挙げられるのが「聞き返しの多さ」です。特に慌ただしくしている職場では、頻繁に聞き返しをすることで怒ったり、嫌な顔をする方も少なくありません。このことが原因となって、聴覚障害者の中には、聞こえていないにも関わらず分かったふりをしたり、適当に相槌を打つ方も多くいます。できるだけ「聞き返しても大丈夫」と思ってもらえるような雰囲気を作ることも大切です。

ゆっくりと大きな声で話そう

聴覚障害者が会話を理解することができるよう、ゆっくりと大きな声で話すことも大切な配慮の一つです。できるだけ口元が見えるように、顔と顔が向き合っている状態で会話をするのが良いでしょう。マスクをしている際は、外してあげるのがベストです。新型コロナウイルスの感染のリスクがある場合には、ソーシャルディスタンスをしっかりと保ちましょう。

どんな配慮が必要か本人に聞いてみよう

全ての障害に共通して言えることですが、配慮の仕方に正解はありません。正しいと思って行った配慮でも、聴覚障害者本人にとっては嬉しくないこともあります。そのため、具体的にどんな配慮を必要としているのかを本人に聞いてみるのが一番良いでしょう。お互いの関係性をより一層深めることができます。

手帳のない難聴者が利用できる福祉制度

日本の聴覚における障害者手帳取得の基準はかなり厳しいため、手帳を所持できない難聴者も多くいます。片耳が全く聞こえない場合や、両耳が軽度難聴の場合では、手帳を取得することはできません。そのため利用できる制度がほとんどなく、一般枠でしか就職できないのが現状です。そんな方のために、ここでは「手帳のない難聴者」が利用できる主な福祉制度について解説します。

障害年金

障害年金とは、公的年金の加入者が所定の障害状態になった際に支給されるものです。難聴やめまいの疾患を持っており、さらに厚生年金・共済年金の加入者である場合には、「障害厚生年金3級」もしくは「障害手当金」を受給できる可能性があります。

難病支援

障害者手帳の基準に該当していなくても、国が定める難病を患っている方は支援を受けることが可能です。聴覚の場合でいうと、「突発性難聴」と「遅発性内リンパ水腫」が難病に該当します。さらに詳しく知りたい方は、「難病相談支援センター事業」や「難病患者就職サポーター」に問い合わせてみることをオススメします。

補聴器の助成制度

近年、障害者手帳を持っていない難聴者に補聴器を助成する自治体が増えてきました。その多くは18歳未満の子どもや高齢者が対象となっていますが、中には年齢制限を設けていない自治体もあったりします。言葉の発達に不安を抱えている子どもがいる場合には、この制度を利用し、補聴器の購入を検討するのも良いかもしれません。このように、身体障害者手帳を所持していなくても利用できる福祉制度というのはいくつかあります。市や自治体によって詳細は異なりますが、少しでも日常生活を快適に送ることができるよう、日頃から情報収集を心掛けておくことも大切です。TwitterやFacebookなどのSNSでも情報が発信されているため、チェックしてみてください。

まとめ

いかがだったでしょうか。「聴覚障害者の基礎知識」というテーマで、種類や等級・コミュニケーション手段に加え、日常生活や仕事における不便さについて解説しました。聴覚障害者と一言でいっても、種類や原因・聞こえの程度・不便さは本当に様々です。中には聴覚に障害を抱えたことで、生きることに息苦しさを感じている方もいます。聴覚障害者が不自由なく暮らすためには周囲の協力が必ず必要です。ちょっとした配慮が多くの聴覚障害者を救うといっても過言ではありません。聴覚障害者と接する際は、今回ご紹介した配慮の仕方を参考にしてください。

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